Weekly "Keyboard World"
週刊「鍵盤世界」
1. Uselessness
かつて『The Macintosh Bible』の著者の一人、Arthur Naiman
は 「Star-Trek
ではなく、IBM にへつらわないキーボードを求む」
という一文を書きました。
「彼らは、Mac
ユーザが肩を脱臼させずにマウスに手を延ばすことが出来るかどうかをという重要な問題にはお構いなしで、
むしろ Star-Trek の宇宙船 Enterprise 号に指令を送っているような気分になってくれるだろうぐらいに考えているようです」
― 1997.9.1 掲載。
最近のキーボードはどんどん大きくなるばかりで、 狭い日本の住居やオフィスでキーボードを使わざるを得ない人々は、 みんな辛い思いをしているのではないかと思います。
特に現代は GUI 全盛で、机の上にはネズミが走り回るような環境が一般的になりましたから、 巨大なキーボードはそれだけでも邪魔になります。 机の上にでかいキーボードを置いたら、ネズミが遊ぶスペースが狭くなってしまうのです。 Macintosh のマウスは「速く動かすとポインタが大きく移動する」 仕組みだからまだマシですが、MS-DOS / Windows やら UNIX な世界のマウスにはそんな気配りはされてませんから大変です。 しかも最近の環境っていうのは大きなモニタと 1600×1200 みたいな高い解像度を要求しますから…
端まで動かして、マウスを持ち上げて、また端まで動かして、 またマウスを持ち上げて…(この作業を 2000 回くらい繰り返す)…おお、 ようやく「ごみ箱」に書類を入れることが出来たぞ。
なんつー事態に…すみません、近いものはありますが、そこまで酷くはないです。 でも計算機ベンダの連中ってのはもしかすると、「日本人はみんな大きな家に住んでいて、甲子園球場が 30 個ほど入る机くらい持っているだろう」とでも考えているのかもしれませんね(嘘つけ)。
ところで、キーボードを眺めていると、たまに 「このキーって一度も使ったことがないけど、 一体何に使うんだろう?」と首をかしげてしまうようなキーが居座っていることがあります。往々にして、 そんなキーのせいでキーボードがでかくなってしまっているのですが…。Macintosh な世界で一般的に使われている「Apple Keyboard」系のキーボードには幸いにもその手のキーは少ないものの、 PC-9800 シリーズやら AT 互換機のキーボードにはその手のキーがてんこ盛りです。
例えば、AT 互換機用の 101 キーボードについている SysRq キーや、98 のキーボードについている Help キーなどなど、ですね。 これらはほんの一例で、およそほとんどの計算機のキーボードには、この手のキーがついているのが常です。
それらの誕生にはいろいろな由来があるはずですが、大抵は次のようなものだと考えられます。
- 昔の機械 / システムで「どうしても」必要だったもの
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キーボードは入力機器ですから、 操作の対象とするハードウェアによっては「特殊な入力」を要請されることがあります。 その手の入力をソフトウェア的に処理できればそれに越したことはないのですが、 どーしても「特別なキーを割り振らなければ駄目」っていう事態も出てくるです。
でも実はそういう事態っていうのは、意外と時間が経つと意味がなくなってしまうものなんです。 例えば、ある機種用に特別な機能を実現するキーを持ったキーボードを作ったはいいんですが、 その後継機種では別な方法でその機能を実現してしまったため、 キーの存在意義がなくなってしまった、なんていうパターン。 そうなるとそのキー自体はキーボード上からなくなって構わないはずなのですが、 大抵の場合そのまま残ってしまうことが多いみたいです。で、後から 「歴史的経緯によって残っている」とかいう訳の分からん説明によって、 その存在意義がウヤムヤにされてしまうんですね。
- ハードウェアベンダが「こんなキーがあったら、 ユーザがこんな機能をキー一発で呼び出せて楽ちゃうんか」と、 余計な気を回して(?)つけたもの
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こんなふうに気を回して付けたキーっていうのは、 大抵アプリケーションベンダからはサポートされなかったりします。 当然、そのキーは使われないまんま、「役立たず」になってしまいます。 キーのキートップに打たれた「そのキーを叩くことによって実現できる機能」の、何ともの悲しいことでしょう。 多くのシステムの多くのキーボードに「help」って大きく書かれたキーがあったりするのですが、 そのキーを叩いたところで、誰も助けてくれないんですよね。
- 昔、そのハードウェア上で動いていたアプリケーションが使っていたキーが、そのまんま残っているもの
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この「昔、そのハードウェア上で動いていたアプリケーション」っていうのは、 大抵そのハードウェアベンダがそのハードウェアに最初から載せていたアプリケーションです。 上記と同じパターンに終ることが殆んどでしょう。
ユーザの立場からすると、本来この手のキーっていうのはなるべくならないほうがいいんです。 それは、先に述べたように「キーボードが大きくなってしまう」 という理由もあるのですが…その手のキーっていうのは 「特定のハードウェアやその上で動作するシステムでないと『使えない』『意味がない』キー」だからなんです。
そのハードウェアがそのキーをサポートしなくなったり、 そのアプリケーションが廃れてしまったら、 意味がなくなってしまいますし、邪魔になってしまいます。 もちろん、そのシステムやアプリケーションを最初から使わないユーザには、 不便極まりないものであることは言うまでもありません。
また、この手のキーっていうのは、付け始めると際限がなくなってしまいます。 「あんなキーもこんなキーも…」ってなってしまうからです。 ワープロ専用機のキーボードを見て下さい。滅茶苦茶な数のキーがありますよね。
もっとも、最近は GUI の発達によって、「キーボードでなんでもかんでもやんなくても、 マウスで画面のボタンをクリックすればええやんか」という、 健全な思想が普及してきてますから、今後はそうそうキーボードに新しい(奇妙な)キーが増えることはないでしょう。 あとは今あるキーボードから、今ある奇妙なキーを取り払ってもらえれば万々歳。
…そうか思ってたら、最近(でもないか)、「うちのソフトで使うから、 うちのソフト用のキーがついとるキーボード作ってまえ。 ついでにコイツがデファクトスタンダードじゃ、へっへーん」 などと言って、勝手にキーボードを作ってしまう…というパターンが出て来たのは、記憶に新しいところです。 もちろん、こんなユーザ無視、というより、 自社のソフトウェアのことしか考えない行為をするのはあの会社しかありません。 そういや最近、マウスでも同じようなことをしてましたが。
まぁ、その会社がこのキーボードをデファクトスタンダードにしようとしたかどうかは定かではないのですが…。 どのみちあの世界にはチョウチン持ちが多いので、放っておいても勝手に周りが追従しちゃうんですよね。
それにしても、本当にあの「ミ田」キーを押して 「わーい、スタートメニューが出て来たうれしーなー」 などと言っている幸せな人って、いるんでしょうか?