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Weekly "Keyboard World"

週刊「鍵盤世界」

3. Special Character

キーボード上の各種特殊記号の配置方法には、大きく分けて 2 種類が存在します。 この 2 種類の違いは、計算機で日々の糧を得ている人間にとって、大きな問題として圧し掛かってきます ― 1997.9.8 掲載。

前回、「キーボードの文字の配列は基本的にみんな QWERTY 配列に準拠しています」などということを書きました。 アルファベットだけでくるくる回るような世界でしたらこれで全然困らないのですが、世の中には 「!#$%^&*()_-+=~`」…などという「特殊記号」が存在するので、困ったことが起こるのです。

様々な計算機を使っていく上で ― つまり、様々な種類のキーボードを使っていく上で ― 特に困ることというのは、「特殊記号の位置がキーボードによって違うことがある」ということです。

なんていう経験が、皆さんの回りでもあるのではないでしょうか? なにを隠そう私自身も、職場で使っている計算機と自宅で使っている計算機のキーボードが違うことがあると、

「このキーボードって、どんな配列だったっけ?」

などという事態にときどき陥ります。自宅の計算機ならともかく、職場の計算機はちょっとやっかいです。 会社の支給品っていうこともありますし、他人と共同で使わざるを得ない計算機だったりすると、 自分の都合だけを通すというわけにもいきません。

そうは言っても、特殊記号の配置にも一定の特徴、と言うか、規定みたいなものがありますので、 「違うキーボードだと特殊記号の配列が全く違う」ということはまずありません。 ただ、「こんなキー、一般の人はあんまり使わないよな」なんて思われているキーの中は、 時としてとんでもない位置に追いやられてしまったりすることもありますので、その辺が厳しいところです。

さて、その問題の特殊記号の配列方式(別に特殊記号に限った話ではなくて、 キーボード配列の規格なのですが)には、大きく 2 種類が存在します。 一つ目はISO(国際標準化機構)の規格(ISO-2530-1975)にならったもので、次のような配列になっています。

ISO-2530-1975 に準拠したキーボードの配列
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日本で広く使われている「JIS 配列準拠」(と呼ばれる)キーボードにおける特殊記号の配置は、 この配列に近いものを採用しています。ですから、「Apple Keyboard II JIS」をお使いの Macintosh ユーザや、日本語 106 キーボードをお使いの AT 互換機ユーザ、PC-9800 シリーズのユーザにはお馴染みの配列でしょう。

さて、この配列にはちょっとしたメリットがあったりします。 それは何かと言いますと…。

ASCII(ISO/IEC 646) での文字表現に従うと、各キーの上段と下段に刻印された文字のビットは、1 ビットしか違わない」

というものです。こう書くとちょっとわかりにくいかもしれませんので、 実際に ASCII の表(抜粋)を見て頂きませう。

ASCII の表
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010 SP ! " # $ % & ' ( ) * + , - . /
011 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 : ; < = > ?
100 @ A B C D E F G H I J K L M N O
101 P Q R S T U V W X Y Z [ \ ] ^ _
110 ` a b c d e f g h i j k l m n o
111 p q r s t u v w x y z { | } ~ DEL

1 段目と 2 段目、3 段目と 5 段目、4 段目と 6 段目が、 キーボードのキー上ではペアになっているのがわかるかと思います。 ペアとなった段では、上位 3 ビット(各列の左端の行の 3 桁の数値の並びです)が 1 ビットしか違いません。 特殊記号だけでなく、アルファベットの大文字小文字もそうですね。

ただし、「SP」と表記した スペース と、「DEL」と表記した Delete だけはもちろん事情が異なります。 何せこの 2 つの文字は自前のキーを持っていますからね。 というわけで、「0」と「_」にはシフト側の文字(キーの上段に刻印された文字)が存在しないのです。

これの何が嬉しいのか、と言いますと… Shift キーを押しながらキーボードのキーをタイプした場合、電子回路側での操作は 「ビットを 1 つ立てる / 落す」だけとなりますので、キーボードの電子回路の構成が簡単になるのです。

こうしてみると、特殊記号一つの配列にも人類の偉大なる英知が隠されているということにお気づきになるかもしれませんね (ってそんなに大袈裟なもんかい)。

さてさて、ISO-2530-1975 準拠方式と並んで広く採用されているのが、 俗に「US 配列」と言われているキーボードの記号配列方式です。 もともと、米国のビジネス用タイプライタで採用されていた記号配列だそうですが… なにぶん私はタイプライタ世代ではありませんので、ちょっと確認は取れませんでした。

この配列のことを「ASCII 配列」と呼ぶ人も多いのですが、ASCII は文字コードの標準であり、キーボードとは無関係なので、この呼び方は誤用であると言わざるを得ません。 もっとも、この配列のことを正式にはなんと呼べばよいかは、私にもよく分かりません。 手元にある「岩波情報科学辞典」では「代表的なアメリカ式配列」などという、わけの分からない名前で呼ばれていますが…。

とりあえず、「US 配列」のキー配置の一例を次に示します。

俗に「US 配列」と呼ばれるキーボードの配列
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このように世間には 2 つの大きな趨勢がありまして、我々一般ユーザはそれに翻弄されるだけの存在であるわけです。 でも、この 2 つの特殊記号の配列、どちらがいいのか…と言われると、実はちょっと難しいんですね。

特殊記号の配置については、結局のところ「慣れ」の問題に落ち着きます。 つまり、最初にどちらの配列でキーボードを使ったか、 どちらの配列のほうが慣れているか、といった程度の問題になります。 また、「アルファベットはタッチタイプ出来るけど、記号類はちょっと…」 という人が多いという事実も手伝って、拘らない人にはあんまり大きな問題にはなりません。

でも、拘る人には大問題です(笑)。

まずは特殊記号をタッチタイプ出来ようになるかどーか、っていう問題です。 特殊記号をタイプする機会は、アルファベットと比べれば多くありません。 そのため、どーしても特殊記号はキーの位置を覚えるまでに時間がかかります。 そんな状況下で、違う種類のキーボードを同時並行的に使用してたら… 当然、覚えられるものも覚えられなくなってしまう、などという事態に陥ります。

勿論、タッチタイプ出来る人は出来る人で大問題です。 何せ、いつもの調子でメーラを起動し、相手先のメールアドレスをタイプ。 ところが、「@」をタイプしたつもりが「"」になってしまった、 なんてことになると目も当てられません(そこまでオーバーかどーかはアレですけど)。 で、慌ててキーボード中を探して P の横に「@」を発見… この瞬間、彼のフラストレーションは臨界点にまで達すること間違いなしです (旧い言葉を使うと「エネルギー充填 120%」ってやつですね)。

先に書きましたように、仕事場のキーボードだと「こんなキーボード使えるかい!! 俺にあったやつを持って来んかい!」と言える機会は非常に少ないと思われます。 キーボードの違いによる作業効率の低下にまで気を配れるナイスな上司、 っつーのはなかなかいないのではないでしょうか。

自宅で日本語 106 キーボード + Windows な環境の人が、職場で US 配列準拠の Apple Keyboard + Macintosh を強引に使わされていたら…

「ええい、なんで Mac のキーボードはこんなにタイプしづらいんじゃ! やっぱり Mac なんかアカン!」

などと言い出しかねませんしね(ホントか?)。

世間一般に対して望む事は、

ということです。 特に最近はパソコンを買うとデフォルトでキーボードがついてくるんですけど、あれは絶対に間違ってます。 やはりキーボードは自分で選べるような環境になくてはいけないと思うですが… 皆様はどのようにお感じでしょうか?