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Weekly "Keyboard World"

週刊「鍵盤世界」

16. Age of "T"

T 字型のカーソルキーの配列は、決して悪いものではありません。 しかし、この配列をノート PC にまで持ち込むと、そこには悲惨な事態が発生します。 このような不条理を持ち込むのは、設計者の怠慢としか言えません ― 1998.05.12 掲載

PowerBook 5x0 を最初に見たときの大きな落胆は、今でも決して忘れません。 何しろ PowerBook 5x0 のキーボードには、 あの忌まわしくも不細工なファンクションキーなんてものがついていたんですから。 ただ、落胆も然る事ながら、あまりにもユーザを馬鹿にしているようで、 思わず笑ってしまったのもまた事実。

考えてもみて下さい。殆んどの Macintosh ユーザは、Apple Keyboard か Apple Keyboard II、及びそれに類した「ファンクションキーのついていない」キーボードを使っています。 つまり、Apple というメーカは、自宅の Macintosh でファンクションキーを使っていない人間に対して、「ほら、今度の PowerBook にはファンクションキーがついているんだよ」とばかりに、 ファンクションキー付きのノートブックを売り付けていた、 というわけなんです。こんな間抜けな話があるでしょうか。

でも一番恐ろしいことは、それ以降の PowerBook には全てファンクションキーが標準装備になってしまった、っていうことでしょう。 ファンクションキーがないキーボードで不便を感じていない Macintosh ユーザが多い中、なぜ PowerBook にだけファンクションキーが標準装備なのか… もしかして、「Windows ユーザが PowerBook に乗り換えるとき、 ファンクションキーがないと不便じゃん」なんてことを Apple は考えているのかもしれませんけどね。

でも PowerBook はまだましなほうです。 Wintel なノート PC では、あの小さな筐体にファンクションキーは当然として 無変換 やら カタカナ / ひらがなPgUpHome なんてキーをところ狭しと詰め込んでいるわけですから。 だいたい、日本の Windows 使いのうち、一体何人が「変換」キーで日本語変換をやっているのでしょう。 普通は「スペースバー」で変換しているのではないかと思います。 「だったら、変換 キーなぞ不要ではないか」と思うのは、 もしかして私だけでしょうか(そんな莫迦な)?

こういった「本当に必要かどうか非常に疑わしいキー」を並べるためだけに、 「本当に必要なキー」を小さくせざるを得ないという、歪んだ Wintel 業界。 しかし「一番の歪みを作り出しているのはコイツらだ!」と私が考えているもの… 今回のテーマはこの「歪みの元」について、です。

最初の PC と一緒に販売されたキーボードには、実はカーソルキーというものはついていませんでした。 カーソルキーはテンキーと共用で使用するものであり、そのために Num Lock キーなんていうものがつけられていたのです。 しかし、「テンキーから独立したカーソルキーがないのは理不尽だ! 大量に数値を入力する際に、不便で仕方がないではないか」と、この設計はすぐにユーザの不満を呼びます。 そのため、IBM はしぶしぶ(?)キーボードにカーソルキーをつけることになりました。 その配置こそ、今ではお馴染みになった、この「逆 T 字型」だったのです。

「逆 T 字型」のカーソルキー

長い間、この「逆 T 字型配列」は PC のキーボードで当たり前のように居座ってきました。 やがて時代は移り変わり、ノート PC という文明の利器が登場してきます。 そして猫も杓子も「もばいるこんぴゅーてぃんぐ」というコトバに踊らされてノート PC を買うようになった今現在、ふと Wintel なノート PC を見ると、そこにはしっかりと「逆 T 字型」の思想が息づいていました。 なんと世界のノート PC の設計者達は、何を血迷ったか「逆 T 字型カーソルキー」をノート PC にまで採用してしまったのです。

その結果 Wintel なノート PC の世界では、このように「歪な」配列を持つキーボードが大勢を占めるようになってしまったのでした。

ノート PC のカーソルキー
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\ ろ
Shift

何故この配列が歪なのか、それは、カーソルキーのせいで極端に小さくされてしまった右 Shift キーの存在が物語っています。 仮にこの配列を持ったキーボードで文章をタイプしてみるとしましょう。 大文字の「A」をタイプしようと右手の小指は右 Shift キーを捉え、 左手の小指は A のキーをタイプ… ところが、デスクトップPCのキーボードと同じ間隔で右 Shift キーを押さえた右手の小指の真下にあったのは、こともあろうに キー。 その瞬間、カーソルはたちまちウィンドウを上へ上へと駆け登り、 どうでもいい場所に「a」という文字がタイプされてしまうというわけです。

計算機の用途は人それぞれでしょうから、「別に問題ないじゃん」と思う人も多いのかもしれません。 でも、計算機で文章を作ることを生業としている場合、これはかなりタイプし辛い配列です。 何故 Shift キーはキーボードの両側についているのか、 その理由を考えれば一目瞭然でしょう。 つまり、左手が担当するキーと共に Shift キーを使う場合は右 Shift キーを、右手が担当するキーと共に Shift キーを使う場合は左 Shift キーを使うから、です。

勿論、PC を使う人達が全て「サルのようにキーボードを叩きまくる」 という人種でないことは重々承知の上です。右 Shift キーの重大性よりも、カーソルキーが「逆 T 字配列」であることのほうが大切というユーザが世界には沢山いるということも知ってます。 ゲームがメインで計算機を使っている人などはそうでしょうし、実際、 Macintosh が採用している「一列カーソルキー配置」に対する根強い不満について耳にしたこともあります。 ですので、この「逆 T 字配列」が一般的であるという理由はわからないわけではありません。

とは言え、日々の糧を得るためには文字を大量にタイプしなければならない我々にとって、 あのタイプしにくい右 Shift キーは使い辛くて仕方がない、というのは事実。 「右 Shift キーを邪魔しない場所にカーソルキーがついているノート PC」 が一般的になってくれないものかと、いつも考えています。 PowerBook のように、カーソルキーがキーボードの最下段に綺麗に並んでいるキーボードだったらまだ納得出来るのですが。

…と思ったのですが、Windows なノート PC の場合、 最下段には 変換カタカナ、 そして「Windows キー」のように、これまた余分なモノが大量に並んでいることに気がつきました。 この上更に キーまでもが最下段に並んでしまうと、 スペースバーの長さがまだ縮んでしまいます。右 Shift キーとスペースバー、どちらが大切というのはかなり難しい問題。 やはり Wintel な計算機の場合、カーソルキーの配置をどうこうするという問題の前に、 あの厄介な「日本語関連キー」の処分のほうが先みたいですね。