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Weekly "Keyboard World"

週刊「鍵盤世界」

14. The whole aspect of JIS X 6002-1980

Chapter 3. Keyboard Layout : Case 2 and Control Characters

英文タイプライタに慣れている利用者から見れば、あまりにも使いづらい JIS X 6002-1980 の配列。しかしもう一つの配列のほうは、ある程度利用者の現状を勘案したものとなっています ― 1997.11.19 掲載

前回は「JIS X 6002」の図 1 を紹介しました。しかし、図 1 の配列は文字の種類を指定するために、いちいち 英記号仮名 といったキーを押さなくてはいけないような代物。 こんなキーボードでは、Shift キーという文明の利器の恩恵に預っているタイピスト達に

「なんかー、こーいうキーボードってぇー、チョー使いにくいってカンジー」

なんて言われるのがオチ、というところで纏めたと思います。

このような事態を予測して、「JIS X 6002」にはちゃんと Shift キーに慣れた人の便宜を考えた配列も提示されています。 それが JIS X 6002 の図 2 です。

JIS X 6002-1980 図 2
9901234 5678910 1112131415
SOHSTX ETBETX EOT F
!
1 ヌ
"
2 フ
# ァ
3 ア
$ ゥ
4 ウ
% ェ
5 エ
& ォ
6 オ
' ャ
7 ヤ
( ュ
8 ユ
) ョ
9 ヨ
 ヲ
0 ワ
=
- ホ
~
^ ヘ
|
\ ー
後退 抹消 E
H
TAB

Q タ

W テ
 ィ
E イ

R ス

T カ

Y ン

U ナ

I ニ

O ラ

P セ
`
@ ゛
{「
[ ゜
復改 D
英数 /
仮名
Shift
Lock

A チ

S ト

D シ

F ハ

G キ

H ク

J マ

K ノ

L リ
+
; レ
*
: ケ
}」
]ム
C
Shift  ッ
Z ツ

X サ

C ソ

V ヒ

B コ

N ミ

M モ
< 、
, ネ
> 。
. ル
?・
/ メ
_
 ロ
Shift B
間隔 A

解説には 英文タイプライタ系の鍵盤の操作に慣れた使用者の増加に伴い、 英文タイプライタと同様なノンロック形式のシフト操作が可能な鍵盤に対する要望が強まった と書かれています。 つまり、「ブチョー。ワタシ、シフトキーが使えないキーボードでなんて、仕事出来ませんから。それじゃ」 なんてことを言っていた「英文タイプバリバリのおねーさん」が日本中に 300 万人位はいた(ウソつけ)、ということです。

ついでに言いますと、部下に恵まれなかった部長さんはその後「なんてワガママなオンナなんだ。 俺も部下に恵まれてないなぁ」とかと考え、「オージンジ、オージンジ」 に電話をかけたとかかけなかったとか…(真っ赤なウソ)。

図 2 の配列の特徴は、一目見れば分かるように、 図 1 になかった Shift キーと Shift Lock キーが追加されているところです。

この配列では、英字英記号仮名仮名記号Shift キーで切替えられるようになっています。 Shift キーを押した場合は、押している間だけ切替えが有効 (これは、現在一般的に使われている Shift キーの用法と同じですね) ですし、Shift Lock キーを押した場合は、もう一度 Shift Lock を押したときまで切替えが有効となります。

ここで、図 2 の配列に用意されているのが Caps Lock ではなくて、 Shift Lock であることに注意して下さい。Shift Lock を一度押すと、もう一度 Shift Lock を押すまで、英数モードでは英記号、仮名モードでは仮名記号がキーボードから送信されるということです。 また、JIS X 6002 では「Shift Lock 中に Shift キーを押した時の処理」については規定していませんので、 Shift Lock 中に Shift キーを押しても 「英記号モードから英数モードに戻る」、或いは「仮名記号モードから仮名モードに戻る」 などといった特別な変化はしないようですね。

図 2 では 英数 キーと 仮名 キーは 英数 / 仮名 キーと一つに纏められています。トグルスイッチのようなものになったと考えて下さい。 英数モードで 英数 / 仮名 を押すと仮名モードに、仮名モードで 英数 / 仮名 を押すと英数モードに移行します。 このように、英数 キーと 仮名 キーを一つの 英数 / 仮名 キーに纏めてしまったのは、非常に立派な判断だと評価出来ます。

現在のキーボードでも、英数仮名 を分けてあるキーボードが幾つか存在するのですが(Apple Keyboard II JIS などはそうですね)、 英数 モードのときに 英数 キーを押すメリットはありませんし、 仮名 モードのときに 仮名 キーを押すメリットもまたありません。 それなら、「機能」としてのキーではなく、「切替えスイッチ」としてのキーとして定義したほうが、 ユーザにとっては使いやすいはずです。キーも一つだけですみますしね。

規格には「英数 キーと 仮名 キーに分けて使用する場合は云々」 といったことも書いてあるのですが、デフォルトを 英数 / 仮名 にしたところについては、「やるじゃん鍵盤配列専門委員会」って感じです。

…さて、これで JIS X 6002 の解説はおしまい、としたいところなのですが、 皆様の疑問はまだ残っていることだと思います。 一体、最上段…つまり、F 列に定義されている SOHETX というキーは何のために用意されているのでしょうか。

前回、JIS X 6002 図 1 の解説をしたときに「キーボードの操作と情報の取り扱いが密接に関係している」 ということを書きました。 この「SOH」とか「ETX」というのは、通信などで使われる制御文字です。 それぞれの文字の意味について長々と説明しても多くの読者には退屈でしょうし、 本コラムの意図とも離れてしまいますから、ここでは簡単な説明に止めますね。

SOH
start of heading(ヘディング開始)
STX
start of text(テキスト開始)
ETB
end of transmission block(伝送ブロック終結)
ETX
end of text(テキスト終結)
EOT
end of transmission(伝送終了)
CAN
cancel(取消)

昔の計算機環境というのは、今のように「目の前に計算機がある」なんていう環境ではなく、 「どこか遠くに大きな計算機があって、ユーザは端末から計算機を使う」なんていう環境が一般的でした。 つまり、ユーザは端末から通信回線を通じて計算機を使っていたというわけです。

そういう環境ですと、時と場合によっては、 端末と計算機の通信の手順までユーザが面倒を見なければならない、という事態も発生します。 つまり「今からデータを送ります」「これでデータはお終いです」、或いは 「さっき送ったデータ、実は間違ってたから取り消してね」などということをユーザが計算機に伝えなければいけません。 上に挙げたキーは、それらの指示をキーボードから入力するために備えられていたんですね。

しかし、今ではそのような操作はアプリケーションや通信のレベルで吸収されていますので、 現在のキーボードには必要ありません。SOHETX などのキーをキーボード上に準備しなければならなかったのは、ずっと昔の話なんですね。

なお、図 2 の配列には CAN キーがありません。 H TAB キーにその場所を取られてしまったからです。 というわけで、図 2 では CAN キーの位置は特に規定されていません。

2 週に渡って説明した JIS X 6002 の配列、現在言われている「JIS 配列準拠」のキーボードとは、 随分と違うということがお分かりでしょうか。 尤も、今現在こんな配列のキーボードを作ったところで、「時代錯誤も甚だしい」って言われるのがオチですよね。 JIS X 6002 は、既にカナをキーボード上に配置するときのガイドラインとして存在しているに過ぎないのかもしれません。

ただ、「JIS X 6002」で規定されたカナの配置、 これは後々までユーザサイドでの利用に不利益をもたらすこととなってしまいました。 一体、このカナの配置というのはどのようにして決められたのでしょうか。 次回は、そのあたりについて探ってみたいと思います。

それでは、また来週。