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Weekly "Keyboard World"

週刊「鍵盤世界」

13. The whole aspect of JIS X 6002-1980

Chapter 2. Keyboard Layout : Case 1

JIS X 6002-1980 には二つの種類のキーボードが定義されています。 しかしこの二つの定義は、現在使われている「JIS 配列キーボード」とは、似ても似つかぬものです。 なぜこのようなキーボードが定義されなければならなかったのか。 その原因は、当時の計算機事情にありました ― 1997.11.19 掲載

前回はキーボードとは全く関係のない話しかしませんでしたが、今回はちゃんとキーボードの話をしましょう。

前回からテーマにしている「JIS X 6002-1980」。 この規格には、2 種類のキーボードの配列が規定してあります。 この 2 つの違いは本質的なものではなく、キーボードの周辺に散らばっている 「特殊キー」の扱いや思想が違うと云うだけです。 今回はこの 2 つの配列のうち、「図 1」として定義されているものを取り上げましょう。

今までこの「鍵盤世界」でキーボードの図を表示するときは、特に考えずに升目を切り、 キーボードのキーに刻印されている文字を表示してきました。 でも、実はキーボードの表記にはちゃんとした規則があります。 「規則」と言っても、特に難しいものではありません。 ただ単に、「キーの位置は、英字の列名と数字 2 桁の行番号で表す」というだけのことです。 下の図において最上段に並んでいる 0 - 14 の数字、そして最右列に並んでいる A - F の文字、これらが列名と行名の規定です。今回は、この表記に倣って表記してみましょう。

JIS X 6002-1980 図 1
01234 56789 1011121314
SOH STX ETB ETX EOT F
!
1 ヌ
"
2 フ
# ァ
3 ア
$ ゥ
4 ウ
% ェ
5 エ
& ォ
6 オ
' ャ
7 ヤ
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8 ユ
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9 ヨ
 ヲ
0 ワ
=
- ホ
~
^ ヘ
|
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抹消 E
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Q タ

W テ
 ィ
E イ

R ス

T カ

Y ン

U ナ

I ニ

O ラ

P セ
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復改 後退 D

記号

A チ

S ト

D シ

F ハ

G キ

H ク

J マ

K ノ

L リ
+
; レ
*
: ケ
}」
] ム
仮名
記号
C
英数  ッ
Z ツ

X サ

C ソ

V ヒ

B コ

N ミ

M モ
< 、
, ネ
> 。
. ル
?・
/ メ
_
 ロ
仮名 B
H
TAB
間隔 A

文字部分(CSS が有効な環境であれば、色を付けていない部分に相当します)については、皆様よく御存じの「JIS 配列」キーボードの配列です。でも、それ以外の部分に散らばっているキー(CSS が有効な環境であれば、グレーになっているキー)の中には、見なれないものが幾つかあります。 逆に、よく見慣れているはずの Shift キーや Caps Lock キーがないことにお気づきでしょうか。

これは一体どういうことなのでしょう。 というわけで、薄いグレーを付けたキーの役割について順番に説明します。まずは、簡単なところからいきましょう。

間隔 (A 行 : 列の規定なし)

見ての通り、スペースバーです。「列の規定なし」としていますが、 間隔、H TAB の各キーのA列上の関係位置は、おおむね図 1 のとおりとする とありますので、上図のように配置されるべきもののようです。

本筋からは外れますが、ワープロ専用機や日本語 106 キーボードに付けられている、あのスペースバーの短さは一体何なのでしょう。 周りに余分なキーが大量に付けられているせいだと思うのですが… 何となく「アタマ・ワルソー」という感じがひしひしとします。

H TAB (A 行 : 列の規定なし)

H TAB は「水平(= horizontal)タブ」のことで、いわゆる一般的な「タブ」のことです。 こちらについても 間隔 と同様、上図のように配置されるようです。

復改 (D 行 13 行)

「復改」とは「復帰 / 改行」の意味です。簡単に言うと Return キー或いは Enter キーに相当します。「復帰 = CR」「改行 = LF」 の略だと考えれば、このキーが発生させる符号は「CR + LF」のように思えますが、 実際には LF 符号だけを発生させますので、注意が必要です。

なお、「復帰」と「改行」を分けて配置する場合は、 復帰 キーを D13、改行 キーを C14 に配置するように規定されています。

後退 (D 行 14 行)

Backspace キーに相当します。

抹消 (E 行 14 行)

Delete キーに相当します。

上記のキーは、(名称こそ多少異なっていますが)大抵の「JIS 配列」キーボードにも備え付けられているキーです。 では、残りのキーは、どのような役割を担っているのでしょう。

前回、「JIS X 0201-1997」という規格についてお話したことを思い出して下さい。 この規格に規定されている「ラテン文字・片仮名用 7 ビット符号」では「片仮名」と「ラテン文字」 (つまり「英数字」ですね)を「SI」「SO」によって切替えることによって、 片仮名とラテン文字の混在する情報を表現することが出来ました。 「JIS X 6002-1980」という規格は、この「ラテン文字・片仮名用 7 ビット符号」 を扱う規格ですので、キーボードもそれに合わせてデザインされているのです。

「JIS X 6002-1980」図1に規定されているキーボード…つまり、上に挙げたようなキー配列のキーボードでは、 最初は「ラテン文字」を入力するようになっています。

明確な規定があるわけではないのですが、「JIS X 0201-1997」 の初期状態の推奨が「ラテン文字」であることを考えると、 「JIS X 6002-1980」のキーボードの初期状態も「ラテン文字」 であると考えるのが妥当でしょう。

ここで、キーボードから「SO」文字が入力されると、キーボードからは 「片仮名」が入力できるようになります。「SI」文字を入力すると、 キーボードからは再びラテン文字が入力できるようになります。 このようにして、キーボードから「SO」「SI」に対応する文字を入力することにより、 ラテン文字と片仮名を切替えて入力が出来るわけなのです。

上記のキーボードでは、「SI」に対応するキーは 英字英記号、「SO」に対応するキーは 仮名仮名記号 になっています。つまり、英字英記号 を押すと、以後タイプしたキーから送られる文字は全てラテン文字、 仮名仮名記号 を押すと、以後タイプしたキーから送られる文字は全て片仮名になります。

…さて、この 4 つのキーを使って(面倒ながらも)ラテン文字と片仮名が入力できるようになりました。 しかし、疑問はまだ残ります。Shift キーというものがないのに、各キーに刻印された文字の上段と下段をどのようにして入力し分けるのでしょうか。

このキーボード規格の面白い(恐ろしい)ところはここからです。 先程「SI に対応するキーは 英字英記号、 SO に対応するキーは 仮名仮名記号」というように書きましたが、 この 4 つのキーはそれぞれ役割が微妙に異なっているのです。

JIS X 6002-1980 図 1 のキーボードの各キーに刻印されている文字は、 刻印されている位置によって、文字の種類が変えられています。左上に刻印されている文字は 英記号、左下に刻印されている文字は 英字、右上に刻印されている文字は 仮名記号、右下に刻印されている文字は 仮名と規定されているのです。

JIS X 6002-1980 図 1 の、備考欄には キー上面の表示の位置との関係はおおむね右のとおりとする と書いてあり、具体的な位置関係が載せられています。 言葉では説明しにくいのですが、「英記号が左上、英数が左下、仮名記号が右上、仮名が右下」 といった位置関係になっています。

ここまで書けばもうおわかりでしょう。各キーに最大 4 つ刻印されている各々の文字を入力し分けるには、

それぞれしなければならない、というわけなのです。

おっと、英字の大文字小文字の区別について書いていませんね。 皆様のご想像の通り、大文字は「英記号」、小文字は「英字」という扱いになっています。

さて、冷静に考えなくとも「なんて面倒な配列なんだ」と思ってしまうこの配列、実際にタイプすることを考えると、思わず眩暈がしてしまいます。 例えば、「Linux はフリーの OS で、沢山の人が使っています」という文章をタイプすることを考えてみましょう。つまり、

LinuxハフリーノOSテ゛、タクサンノヒトカ゛ツカッテイマス

という文章を入力することになりますが、これだけでも次のような操作が必要となります。

というわけで、黎明期の日本の情報処理の現場では、 こんな訳の分からないキーボードを使わされながら「仮名」と「英字」を入力していたようです。 キーボードの操作と情報の取り扱いが密接に結び付いているのがお分かり頂けたでしょうか。

しかし考えてみると、このキーボード、英文タイプを習ってきたタイピスト達には 「なんていうかー、このキーボード作ったヒトってー、チョーアタマ悪いってカンジー」 と思われてしまっていたのではないでしょうか。

彼女らは Shift キーを使って、もっとスマートに文字をタイプしていたはずです。 大文字を打つために「英記号モード」に、小文字を打つために「英字モード」に、などという精神は理解出来なかったに違いありません。どう考えても効率が悪いんですから。

さて、そのようななわけでこの「JIS X 6002-1980」、もう少しまともな配列が「図 2」として挙げられています。 次回は、この「『図 2』型配列」、そして今回取り上げなかった「F 列に並ぶ奇妙な 3 文字キー」のことを取り上げることにしましょう。

それでは、また来週。