Skip to main content.

Weekly "Keyboard World"

週刊「鍵盤世界」

11. Scroll

普段ノート PC を利用している人間としては、ノート PC のキーボードは、必ずしもデスクトップのキーボードを完全に模する必要はないと考えています。 寧ろ、全てのキーを無理に格納することによって、キーボードの操作性が悪化することを懸念しています ― 1997.11.2 掲載

Macintosh は、OSGUI が最初から完全な形で統合されていた稀有な環境です。 「コマンドをタイプしないと使えない計算機」の概念を打ち崩し、「マウスによる直観的なオペレーション」を目指した Macintosh、そこで最初に採用されたキーボードには、カーソルキーというものはありませんでした。 「位置の指定は、全てマウスで行う」という頑なな姿勢の現れだと言えましょう。

流石にユーザから不評を買ったのか、次のキーボードからはちゃんとカーソルキーが取り付けられましたが、 「マウスを主体とした直観的なオペレーションが身上」という Macintosh のスタンスは、現在でも(一部の機種を除いては)「マウスはバンドルするが、キーボードはバンドルしない」 という姿勢から伺い知ることが出来ます。

UNIX のキーボードは、 最近でこそ PC の影響を受けてカーソルキーや豊富なカーソル移動キーを備えています。 しかし、第 8 回でも書いたように初期の UNIX のキーボードにはカーソルキーはありませんでした。 エディタはカーソルキーなど無縁のラインエディタ、3 桁台の通信速度で端末と計算機が通信していたような時代には、 カーソルキーというものはオペレーションには無縁のものだったのでしょう。現在の UNIX でも、vi や Emacs というエディタではカーソルキーやカーソル移動キーは「存在しない」という前提で使われています。

このような事例を見てみると、キーボードは使われる環境を映し出す鏡だと言うことが出来るでしょう。 キーボードが使われる環境によって、キーボードに与えられる役割はおのずと変わってくるものです。

さて、MS-DOS と共に育ち、現在は Windows と共に歩む 101 キーボード、その 101 キーボードを見てふと気がつくのは、「カーソル移動用」のキー類が豊富に用意されていることです。 4 方向へのカーソルキーは勿論のこと、それ以外にも幾つかの「特別な」カーソル移動用のキーが備え付けられています。

これらのキーは通常のカーソル移動キーとは異なり、カーソルを特別な位置に動かすためのものです。 一見便利そうなのですが、実際はどうなのでしょう。というわけで、今回は 101 キーボード上の「特別な」キーのうち、これらカーソルを移動するキーについて見てみることにします。

まず、Home キーについて見てみましょう。Home キーとは、「『カーソル移動範囲の先頭』にカーソルを移動する」、又は「カーソルを画面の左上に移動する」ためのキーです。

とは言え、「画面の左上」と書いてもちょっとピンとこない方もおられると思います。 この概念は、キャラクタベースの画面でないと意味がないですからね。というわけで、ちょっと説明しましょう。

Home キーでの移動
■←ココに移動する





キャラクタベースの画面では、画面全体が例えば「80 桁×24 行」といった感じで定義されています。 この画面内のいろいろな位置にカーソルが移動するわけなんですが、このような環境で Home キーを押すと、最上段の一番左の位置にカーソルを持っていくことが出来るわけです。図で示すと、こんな感じですね。

ところで、「『カーソル移動範囲の先頭』にカーソルを移動する」場合、 「カーソル移動範囲の先頭」としては、次の二つのパターンがあります。

ただ、このどちらの実装がされているかというのはきちんと決まってない… つまり、「時と場合による」というのは困りものです。とは言え、

というように、両者を厳密に区別した実装が最近は多いように思います (Windows 95 に標準添付のエディタ類はこうみたいですね)。

さて、Home と対で使われるキーが End キー。その名の通り、カーソルを「カーソル移動範囲の一番最後」に移動させるためのキーです。つまり、

といった場所にカーソルを移動させることが出来るのです。 ワープロやエディタでファイルを編集する際、カーソルをファイルの一番最後に持っていく、或いは、編集している行の一番最後にカーソルを持って行く、という使われ方をするのが一般的でしょう。

この End キーも、やはりアプリケーションによって実装が少しずつ異なっているのが困るところです。ただ、こちらも Home キーと同様

という実装が多いようです。

Home キーと End キーの横に並ぶのが、Page Up キーと Page Down キー。 場合によってはそれぞれ「PgUp」「PgDn」などと省略して書かれることもあります。

この 2 つのキーの役割は、その名の通り「1 画面まとめて画面をスクロールする」というものです。 Page Up を押すと画面は上にスクロールし、Page Down を押すと画面は下にスクロールします。

でも、実はこの 2 つのキーにも、時としてちょっとした味付けがされることがあります。 Ctrl キーを押しながらこの 2 つのキーを押すと、 Page Up では画面を左に、Page Down では画面を右にスクロールするような実装もあります。 こうなってくると、何が「Up」で何が「Down」かよく分からないのですが。

画面のスクロールと言えば、もう一つ忘れてはいけないキーが Scroll Lock キーです。この名前は「押すと画面のスクロールが停止する」ということに由来するんですが… 実は、必ずしもその機能を持っているとは限らないんですね。 例えば MS-DOS の場合、画面のスクロールを止めるキーとしては前回紹介した Pause キーや、Ctrl + S というキーボードショートカットのほうが一般的です。

さて、この Scroll Lock キーですが、酷いことにアプリケーションによって実装がまちまちです。 アプリケーションによっては、「Scroll Lock キーがオンの状態だと、カーソルに従ってドキュメントがスクロールする」などという実装をしてます。 兎に角、実生活上では殆ど使う必要がないキーであることは間違いないでしょう。

このように、101 キーボードにはいろいろなカーソル移動用キーが備え付けられていますが、この手の「位置移動キー」が 101 キーボードに各種存在するのは、「キャラクタベースの画面では、カーソルキーで長い距離を移動するのは大変である」からではないかと推測されます。

GUI 環境でしたら、スクロールバーを使って簡単に画面をスクロールさせることが出来ますが、キャラクタベースの環境ではそうはいきません。 カーソルキーをずっと押し続けるのは面倒ですし、何より時間がかかる作業です。 そのため、キー一つで一画面まるまるスクロール出来たり、キー一つでページの最後まで移動できたりしたりすることが出来るような仕組みが、おのずから必要となってくるのでしょう。

ちなみに、UNIX な環境のエディタでは、そのような操作は Ctrl キーや Meta キーを組み合わせて行うか、コマンドモードでコマンドを使用して行います。

というわけで、MS-DOS と一緒に歩んできた 101 キーボードには、必然的に様々なカーソル移動用のキーが用意されたと私は考えるのですが、現在のように 101 キーボードで Windows 95 を使うような環境では、この手のカーソル移動キーっていうのはあんまり必要ないんじゃないのかな、などと思うのです。

せっかくマウスが使える環境になったんですし、「マウス操作で簡単」とかわけのわからないことを言う輩が多い業界なんですから。 何も HomeEnd などという、ぱっと見ただけでは何のことやら分からないキーを用意しなくてもいいはずです。 大多数のユーザ、特に Windows が普及してからぱそこんを使い始めたユーザは、この手のキーは使わずマウスで操作してるんですし。

まぁ、「ボクちゃん、この手のキーがついてるキーボードじゃないとやだやだ」 という人がいるからこの手のキーも残っているのでしょうが、この手のキーがない、もっとすっきりしたキーボードが出回ってもいいと思うですけどね。 特に、小さなノート PC のキーボードにまで無理矢理この手のキーを詰め込んだ挙げ句、

「キーを全部入れたら、キーボード全体がタイプしにくくなっちゃいました」

といった愚かな真似は、そろそろやめてもいいんじゃないのかな、と思うのですが…いかがなものでしょう?